私はこれまで合成化学、生物工学、生理学、遺伝子工学、分子生物学、臨床遺伝学とさまざまな分野を渡り歩いてきました。所属した研究室が6つ、自分が主催した研究室が4つです。いずれの分野も意図して選んだわけではなく、運命に流されてきたというのが本当のところです。古希を過ぎたのを機に、これまで行ってきた研究を振り返り、それぞれの研究に関わる出来事を記録にとどめておくことにしました。
研究内容は論文を読んでいただければわかりますので、どのような経緯でその研究を行うに至ったのか、どのような問題に遭遇したか、どうやって解決の糸口を見つけたか、研究に関わった多くの人々との運命的な出会いなどを紹介しようと思います。
異なる分野を渡り歩いてきたので、一つのテーマを深く掘り下げる仮説検証型の研究ではなく、新しい技術を開発して研究のシーズを見つけるというシーズ探索型の研究となりました。もっとも深く関わってきたのは、ヒト遺伝子の収集・解析と網膜色素変性症の原因遺伝子探索ですので、これらを中心にすえて紹介するとともに、見い出したシーズがどのように育っているかについても追跡調査し紹介する予定です。
これまで収集したヒト遺伝子コレクションの中には、まだ解析が進んでいない多くの面白い遺伝子が含まれています。今後、新しい研究シーズとして紹介していく予定です。なお、このコレクションは理研バイオリソースセンターに寄託してありますので、公的研究機関か民間企業の研究機関かを問わず、研究用としてすべてご利用いただけます。
期間 | 研究室 | 身分 | 研究テーマ |
---|---|---|---|
1971-1972 | 東京工業大学工学部合成化学科 笠井俊保研究室 |
卒研生 | アセナフテンのクロル化 |
1972-1977 | 東京工業大学資源化学研究所生物資源部門 鈴木周一研究室 |
大学院生 | 生体膜を模した選択的応答性膜 |
1977-1978 | 西ドイツマックス・プランク生物物理学研究所 (MPI) | ポスドク | 酵素固定化膜の物理化学的性質 |
1979-1983 | 山口大学医学部第一生理学教室 | 助手 | 子宮平滑筋の収縮メカニズム |
1983-1988 | (財)相模中央化学研究所 (SCRC) GE研究室 |
ポスドク 研究員 |
ヒト有用タンパク質の創製 |
1983-1984 | 米国国立衛生研究所 (NIH) 国立歯科研究所発生生物学研究室 |
客員研究員 (兼任) |
細胞外マトリックスタンパク質の cDNAクローニング |
1988-2000 | (財)相模中央化学研究所 (SCRC) 第17研究班 |
主任研究員 主席研究員 |
ヒト有用タンパク質のcDNAクローニング |
1991-1994 | (財)神奈川科学技術アカデミー (KAST) 第五研究室 加藤ヒューマン・プロテインプロジェクト |
室長(兼任) | ヒトタンパク質cDNA解析技術の開発 |
1995-2000 | 科学技術振興機構創造科学技術推進事業 (ERATO) 加藤たん白生態プロジェクト |
総括責任者 (兼任) |
タンパク質ジグソーパズルを解く |
2001-2014 | 国立障害者リハビリテーションセンター (NRCD) 研究所障害工学研究部 |
部長 研究所長 |
網膜色素変性症の原因遺伝子探索 |